2010年、楽天が「社内の公用語を英語にする!」といってニュースになりました。
そして「TOEIC平均スコアを800点以上にする!」という目標をかかげました。
それから8年たちました。
楽天では着々と社員のTOEIC点数アップはすすみ、現在、社員の平均TOEICスコアは830点。8年前の526点から300点のアップです。また社内の外国人の割合が2割を超えたそうです。
楽天にならって、社内の英語力を高めるためにTOEICの点数目標をかかげる企業が増えました。ですが、TOEICの点数目標だけでは、社内の英語力を上げるのはむずかしい面があります。
楽天はどうやって変わったのか、そしてTOEICの点数目標の問題を見ていきます。
楽天の社内英語公用語化の効果
2010年2月1日、楽天の三木谷社長は、朝礼で英語で挨拶し「社内公用語を英語にする」と宣言してニュースになりました。
英語を公用語にする目的は、次の3つ。
◆グループ企業間での情報共有
◆海外展開に向けて社員のグローバル化をはかること
◆優秀な人材確保(日本人にしぼると人材が限定される)
参考サイト:週刊ダイヤモンド:https://diamond.jp/articles/-/16303
その日を境に、社内英語化がすすみ、なんと、社員食堂のメニューまで英語になりました。
楽天がすごいのは、ただ「英語を公用語にする」としただけでなく、TOEICの点数と期限という数字目標を掲げたことです。
当初の点数目標は、新入社員は700点、役員は800点。(その後、新入社員も800点になります)
世の中ではこの方針に賛否両論でした。
もちろん楽天でも、TOEICだけでは英語を習得するには足りないこともわかっていました。なので、TOEIC以外の英語学習プログラムも準備していました。
ただ、TOEICの点数を明確に打ち出すことで、社員全員がはっきりと目標を共有し、達成感を感じることができます。
それから8年、楽天社員のTOEICスコアは着々とあがっていき、先日のニュースで、楽天の社員の平均TOEICスコアが830点になったことが報じられました。社内の会議も英語で実施されているそうです。
また、TOEICの点数に加え、人材のグローバル化もすすみました。
ニュースでは外国人の社員が2割を超えたといっていますが、開発部門に限定すると、その割はもっと多いです。
2018年10月25日現在の楽天の募集要項では、「開発部全体の5割が外国人」と書かれています。
参照元:https://corp.rakuten.co.jp/careers/graduates/faq/
これまでの道のりについて、三木谷社長は英語でこう言っています。
”To be very very honest, we were not well prepared.This project is very very… you know, big one, and very challenging one.”*
参照元:https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000139196.html
「とても正直なところ、我々は、十分に準備できていなかった。このプロジェクトはとっても大きく、とても挑戦的なものだった。」
やはり、かなり大変だったということですね。ただ楽天は、その労力に見合うだけの影響を日本社会に与えたと思います。
楽天が英語公用語化宣言をした後、ほかにも社内に英語を広める、といった会社がつづきました。有名なところだと、ユニクロ、シャープ、ホンダ、アサヒビール。
公用語化、とまでいかなくとも、TOEICの点数を採用や昇進の条件にする会社も増えています。
TOEICの点数目標だけでは足りない現実
こうして英語に対して積極的な企業が増えていくのは良いことだと思います。
ただ、TOEICの点数目標だけでは、実際に英語を仕事で使うのはむずかしい部分があります。というのも、現在TOEICテストというと、一般的に、リスニング力とリーディング力を見るTOEIC Listening & Reading を指します。リスニング力とリーディング力は大事ですが、これだけでは、実際に英語を話す力にはなりません。
また、TOEICテストは全員が同じ試験を受けるため、内容はかなり高度です。中学英文法や単語力がないと、歯が立ちません。
私は以前、TOEICの点数を昇進の条件とする会社にTOEICを教えていました。実際に教えていて、このことを感じました。
点数目標があるのは、いいことですし、ある程度英語力がある人にとっては、社内のTOEIC点数目標は励みになることです。ただ、長年英語をやっていなかった人や、英語が苦手だった人にはTOEICはむずかしすぎます。
それでも「会社の方針」ということでTOEICを強要すると、「やっぱり英語が苦手」という人を増やしてしまうかもしれません。
こういった人にはまず中学英文法から教えること、また勉強する習慣を伝えることが大事です。また、TOEIC以外でも英語学習のためのプログラムがあると、英語力を伸ばせます。
そうはいっても、そこまでする余裕がある会社ばかりではありません。
こういった状況でTOEICの点数目標ばかりが注目されていっても良い効果が生まれるのかどうか、個人的に疑問は感じます。
英語を話すために必要なことは三木谷社長の姿勢から見える
一足早く社内英語公用語化をはじめた楽天では、苦労して、こういった困難を乗り越えてきたと思います。TOEICだけでなく、社内の会議では英語を使うようにしたり、食堂のメニューまで英語に変えました。
楽天はこの社内英語化のノウハウを集約して、「英語教育総合コンサルティングサービス」をスタートさせ、企業への教育事業にものりだしています。
こういった楽天の英語への取り組み方は、三木谷社長自身の英語を使う姿勢と重なります。
2010年、社内英語公用語化がニュースになった際、当然、三木谷社長の英語力も取りざたされました。
そんな時期の決算発表を、三木谷社長は英語で行いました。日本人が多くを占めるイベントで、英語をつかったのです。
出典元:https://youtu.be/0RrUUA3NwG
当時、色々な形で批判的な意見もあり、「三木谷社長の英語力はひどい」という悪口もありました。
たしかに三木谷社長自体の英語力は、ものすごく流ちょうというわけではありません。
子供のころ少しアメリカに住んでいたこともあるそうですが、基本は、日本人として英語力をのばした人です。大学卒業後、社会人になってから、努力して身に着けた英語です。
★【たかが英語】三木谷社長が英語学習、社内英語化について語った本です。
ただ、三木谷社長はこういった自身の英語やTOEICの点数目標への批判もすべて覚悟の上、スピーチをしたと思います。
私は三木谷社長の英語力というより、この覚悟がすごいと感じます。そしてこの覚悟が、楽天の英語化を推し進めたのだと感じます。
社内英語化をすすめるのであれば、やはり、TOEICの点数目標を掲げておわりというより、社内の英語化を押しするめる覚悟がないと、むずかしいのではないでしょうか。
まとめ:
楽天は2010年に社内英語公用語化を宣言しました。
それから8年、現在社員の平均TOEICスコアは300点アップして830点、外国籍の社員も2割を超えています。ここまでくるのは、大変な道のりだったそうです。
楽天につづき、色々な会社がTOEICスコアを昇進や採用の条件にしています。
今後 市場を広げるにしても、優秀な人材を確保するにしても、外国に目を向けていく必要があります。より広い職種で、英語は話せて当然の条件になっていく可能性があります。
とはいっても、ただTOEICの点数目標を掲げただけでは、社内の英語化は進みにくい面があります。
TOEICテストは一般的にはリスニング力とリーディング力を見るものであり、また、久しぶりに英語をやる人や英語が苦手だった人は、まず基本英文法からやり直す必要があるからです。
こういった全般的な部分から準備をしていかなければ、なかなか日本企業の英語化は進まないように思います。
ただ結局、英語を話すことや、社内の英語化を進めるのに一番必要なことは、覚悟。楽天の三木谷社長はこの覚悟を持って、社内の英語化に手を付けました。楽天の成功の秘訣はそこにあるように思います。
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